株式会社資生堂 久代哲之様(右)・倉橋琢磨様(左)
2019年4月、株式会社資生堂さまの新開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター(GIC)」が
横浜のみなとみらい21地区にオープン。当社はこのプロジェクトの基本構想から移転まで、資生堂さまに併走しました。
発注者のお二人に、当時を振り返っていただきました。
資生堂さまの新研究開発拠点GICは、顧客や国内外の最先端研究機関、異業種など多様な知と人の融合によって、これまでにないビューティーの価値を生み出すための施設です。呼称の「S/PARK(エスパーク)」には、多くの人が集まる「資生堂のパーク(公園)」と、イノベーションが次々と生まれる「スパークする研究所」の二つの意味が込められています。
1、2階は「美のひらめきと出会う場所」をコンセプトとする開かれたコミュニケーションエリア。プロデュースを小山薫堂氏(ORANGE AND PARTNERS)、デザインを佐藤オオキ氏(nendo)が担当しました。4階のコラボレーションエリアには、研究所には珍しい商談スペースや外部研究機関との共同研究室を設置。5階から15階の研究フロアは基礎・基盤研究を支える先進的な研究設備を揃えるとともに、研究員が柔軟で多様な働き方のできるオフィスとなっています。
明豊ファシリティワークスのCM業務内容
開発事業者公募に関する企画提案支援、構想段階から参画、基本構想/基本計画策定、設計施工者(ゼネコン)選定支援、設計・施工マネジメント、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)支援
久代様
スタートは2014年でした。当時、資生堂がこれから100年先も成長し続けるために、R&Dとマーケティングに投資を集中する方針が打ち出され、研究員の人数を大幅に増やすことになりました。既存の研究所では手狭なことから、移転先を探し始めましたが、規模が大きくなるだけでは意味がありません。研究スタイルそのものを変え、「新しい研究のカタチ」をつくる。未来のイノベーションは、そこから生まれるはずです。そのためにはどうしたらいいか。
以前から「これからのR&Dにはお客さまとのコミュニケーションが必須だ」と考えていた私たちは、郊外ではなく、街なかに「都市型オープンラボ」をつくりたいと考えました。たまたまグーグルマップで横浜を眺めていたところ大きな空地があり、調べてみると、みなとみらい21地区の公募中の街区だったのです。担当役員も社長も賛成してくれ、そこからは一気に話が進みました。
久代様
社長の魚谷から最初に言われたのは、「事務局と建設会社だけで進めるのではなく、研究員たちの意見を設計に取り入れるように」ということです。そこで、それぞれのフェーズでたくさんのワーキンググループをつくり、研究員を巻き込んでいきました。
とはいえ、研究所建設の経験者は社内には誰もおらず、どうしたらいいか分かりません。こちらに建築ノウハウがない状態で建設会社と直接やり取りするのもどうか。誰かにサポートしてほしいと思い、CM会社の起用を検討することになりました。
久代様
明豊さんは、「何でもやります、すべて任せてください」というスタンスではなく、フェーズごとにどういうことができるか、こちらにどんな選択肢があるのかを分かりやすく説明してくれたのが印象的でした。いい意味で押し込まれなかった(笑)。どの部分を協力してもらうかをこちらで決めれば、それについては全力で協力しますというスタンスだったので、「これなら信頼できる」と思いました。
久代様
土地を見つけてから横浜市の公募締め切りまで、2カ月弱しかありませんでした。そこでまず、応募に必要な提案書の作成についてのみ、明豊さんに手伝ってもらう契約をしました。その先のCM業務を依頼するかどうか、この時点で決めなくてもよかったので、良心的だと感じましたね。
土地を購入するには横浜市の承認が必要なので、市が開発事業者に期待することを読み取ったうえで、提案に盛り込まなくてはいけません。一方で、われわれにも、研究所として実現したいことがある。明豊さんは両者を整理し、うまくすり合わせてまとめていくのが大変だったと思います。短い時間の中、コンピュータグラフィックの画像でイメージを具体化できたのも助かりました。幸い、「まちに賑わいを創出したい」という市の意向と、われわれの「都市型オープンラボ」のコンセプトがマッチして、無事に土地を手に入れることができました。
久代様
土地の審査は通ったものの、横浜市が開発事業者決定を公表するまでは、われわれが設計施工者とコンタクトを取ることはできません。そんななか、明豊さんは発注者名を伏せた状態で何社かのゼネコンと接触し、設計施工一括請負方式でのプロポーザル参加の感触を探ってくれました。
また、この間に資材や労務費の変動への対応、設計変更にまつわる公正な精算方式など、設計施工者選定に関わるさまざまな取り決めの準備を進めていました。今にして思うと、事前の取り決めが後々効いてくる。資材・労務費が高騰したり、設計変更が発生したりした場合も、要項書に書いてあればトラブルになりません。そこにきちんと布石を打ってくれていましたね。
設計施工者を決める段階でも、こちらの要望をゼネコンにうまく伝わるように翻訳して伝え、二次提案を求めるよう計らってくれました。ゼネコンに対してどこまで要求していいか、われわれには判断が難しいので助かりました。
久代様
ちょうどオリンピック施設の予算オーバーや、耐震ダンパーの性能偽装問題などが社会を揺るがした時期だったので、品質と工期、加えてコストが膨らみはしないかと不安でしたね。
倉橋様
私たち若手研究者は、何十ものワーキングチームをつくり、あれもしたい、これもしたいと自由にアイデアを出していきました。アイデアは最終的に120にも上ったので、そこから絞り込まなければなりません。しかし、どうしたらいいのか分かりません。アイデアをどういう形で建築に盛り込むか、いつまでに何を決めなければならないかなど、不安になることもありましたが、明豊さんはいつも寄り添ってサジェスションをしてくれました。設計段階からコスト推移を可視化し、全体事業費の状況を常に把握してくれていたので、新たなやりたい事が出てきた時、「本当に必要なら、お金がかかっても他で調整すればいい」と言ってくれて、正しい採否を判断する事ができました。
おかげで、研究員がお客さまとじかに触れ合える「S/PARK Beauty Bar」や、実際の生活空間を再現した「リビングラボ」など、当初から出ていたアイデアはほぼ実現できました。
久代様
1・2階のコミュニケーションエリア、オフィス、ラボ、そして竣工後の移転など、プロジェクトの進捗に伴ってステークホルダーが一気に増えていき、関係者間の役割分担や利害調整が大変になりました。この時期に、明豊さんはあたかも資生堂のメンバーのように動き、ニュートラルな視点で体制を構築するとともに、ステークホルダーへの説明や交渉を支援してくれました。これはわれわれもありがたかったし、工事関係者にとっても仕事がしやすかったと思います。
また、さまざまな変更事項や判断を求められる局面では、つねに良き相談役として、意思決定の下支えをしてくれました。一時は朝から晩まで電話で相談していたほどです(笑)。
倉橋様
ここまで大きいプロジェクトの一端を担う経験は、恐らく二度とないでしょう。間近に見ていた明豊さんのプロジェクトマネジメントのスキルをイメージしながら今後の仕事に取り組むことで、この経験を活かしたいと思っています。
久代様
明豊さんや建設会社、デザイナーを含め、信頼できるパートナーがいてくれたことが安心感につながりました。同時に、今回のように多くのステークホルダーの意見を取りまとめてプロジェクトを進めるには、発注側の責任者がそれだけの覚悟と熱量をもって臨まなければうまくいかないと痛感しました。
スタート当初、研究員たちにとってこのプロジェクトは他人事でしたが、ワーキンググループに参加することで自分事になり、能動的に施設づくりに関与してくれた。「研究のスタイルを変えてイノベーションを生む装置」というGICの位置づけを考えると、今はまだ、装置をつくって移転するところまでが実現したばかり。ここを使って研究員の働き方が変わり、イノベーションが生まれるのはまさにこれからだと期待しています。
久代様、倉橋様、どうもありがとうございました。
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